「やま」の記憶
c0164716_18204533.gif子供の頃住んでいた家は雑木林の隣にありました。
玄関を出るとすぐに林の始まり、私はそこを「やま」と
呼んでいました。
まず正面に3本に株立ちした山桜が生えていて
春には赤い若葉と一緒に楚々とした白い花が咲きます。
花はやがてサクランボになります。サトウニシキのような
立派な実ではなくて、マッチ棒の先がちょっぴり膨らんだ
程度でしたがサクランボはサクランボ、
プラスチックの小さなお茶碗に山盛り拾い集めて
妹とままごと遊びのお赤飯にしました。
「やま」に若葉が出始めると足下には高さ20㎝ほどの
草ボケの花が一斉に開ます。草ボケは「やま」一面に
生えていてまるで朱色の妖精が舞い降りたよう
梢の若葉はぐんぐんと大きくなり「やま」は日に日に
明るく活気に満ちてゆくのです。

「やま」には何本か道がありました。
そばの住人が「やま」を通り抜けようと近道をするたびに
踏み固められて出来た自然な道でした。
一人が通れる細い道、そのうちの1本は初夏になると
露草の咲き乱れる小道になりました。露草の小道を
抜けて2軒の家を越えるとクヌギ林が始まります。
クヌギばかりが生えていたので、おそらく椎茸の菌を
つける台木か、炭の材料にするために植えられていた
のでしょう。私にとってはただ秋にまあるい実を
つける木、かくれんぼにうってつけの場所でした。
そこを東に行くと背の高い松や針葉樹が生えた
ちょっと薄暗い林になりました。

遊びはもっぱら「やま」の中でした。
斜めに生えた細い木はもっとしならせて馬乗りになって遊びます。木登りは大好き。下から枝が出ている木を見つけて上ってゆきます。自分なりにこれなら折れないなと言う加減があって、頃合いの良い枝が見つかれば座って一休み。そこでポケットに忍ばせておいたお菓子を食べるんです。まるで小猿のようでしょう。男の子は限界に挑戦するものだからたまには枝が折れて落ちたりしていましたがかすり傷程度ですんでいました。大人たちも「気をつけて遊びなさいね」くらいのことでおおらかに見守っていてくれました。倒れて根っこがむき出しになった所を見つけたときには仲間みんなで大喜び!!枝を集めて斜めに立てかけ、上から杉の葉をかけて屋根を作り秘密基地の出来上がりです。お菓子や漫画を持ち込んでワクワクしながら暗くなるまで友達と過ごしました。当然カブトムシやクワガタがやってくる木もちあゃんと頭に入っていました。
大人になって初めてイングリッシュガーデンを雑誌で見たとき一瞬にして「やま」が蘇りました。写真にあったブルーベルの小道が露草の小道にかさなりました。バラの茂みがズミの林に見えてきました。
c0164716_1822117.gif
あの頃遊んでいた友達の顔や
名前は思い出せないのに
「やま」の匂い、木々の枝振り
咲いていた花のことはしっかり
覚えているのです。
かぶれるのでぜったい触っては
いけない漆の木、秋に赤く色づ
くニシキギや私と同じ名前のマユミ
自然に名前や特徴を覚えてゆきました。
暗い林の入り口に毎年咲く野バラ
おやつ代わりに食べた
甘い木イチゴの実、
台風一過の朝に落ちていた
栗やドングリ、木登りをした木の
感触まで思い出しました。
あの頃あたりまえに見ていた景色が
どんなに素晴らしく美しかったことか
何十年も経ってからようやく気づきました。
学校帰りに抱えるほど摘んだコスモス
忍び込んだ竹林で見つけた
薄紫のスミレの絨毯
ススキの原っぱで見つけた
ナンバンギセル、雪の中で咲いていた
白梅の香り・・・

みんなみんな今の私を作ってくれた
木や花たちに違いありません。
心に残っている大切な宝物です。
by abe-mayu | 2008-01-24 22:43 | Spring | Comments(0)
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Abe mayumi Illustrations Painted Garden Note
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