子供の頃住んでいた家は雑木林の隣にありました。
玄関を出るとすぐに林の始まり、私はそこを「やま」と 呼んでいました。 まず正面に3本に株立ちした山桜が生えていて 春には赤い若葉と一緒に楚々とした白い花が咲きます。 花はやがてサクランボになります。サトウニシキのような 立派な実ではなくて、マッチ棒の先がちょっぴり膨らんだ 程度でしたがサクランボはサクランボ、 プラスチックの小さなお茶碗に山盛り拾い集めて 妹とままごと遊びのお赤飯にしました。 「やま」に若葉が出始めると足下には高さ20㎝ほどの 草ボケの花が一斉に開ます。草ボケは「やま」一面に 生えていてまるで朱色の妖精が舞い降りたよう 梢の若葉はぐんぐんと大きくなり「やま」は日に日に 明るく活気に満ちてゆくのです。 「やま」には何本か道がありました。 そばの住人が「やま」を通り抜けようと近道をするたびに 踏み固められて出来た自然な道でした。 一人が通れる細い道、そのうちの1本は初夏になると 露草の咲き乱れる小道になりました。露草の小道を 抜けて2軒の家を越えるとクヌギ林が始まります。 クヌギばかりが生えていたので、おそらく椎茸の菌を つける台木か、炭の材料にするために植えられていた のでしょう。私にとってはただ秋にまあるい実を つける木、かくれんぼにうってつけの場所でした。 そこを東に行くと背の高い松や針葉樹が生えた ちょっと薄暗い林になりました。 遊びはもっぱら「やま」の中でした。 斜めに生えた細い木はもっとしならせて馬乗りになって遊びます。木登りは大好き。下から枝が出ている木を見つけて上ってゆきます。自分なりにこれなら折れないなと言う加減があって、頃合いの良い枝が見つかれば座って一休み。そこでポケットに忍ばせておいたお菓子を食べるんです。まるで小猿のようでしょう。男の子は限界に挑戦するものだからたまには枝が折れて落ちたりしていましたがかすり傷程度ですんでいました。大人たちも「気をつけて遊びなさいね」くらいのことでおおらかに見守っていてくれました。倒れて根っこがむき出しになった所を見つけたときには仲間みんなで大喜び!!枝を集めて斜めに立てかけ、上から杉の葉をかけて屋根を作り秘密基地の出来上がりです。お菓子や漫画を持ち込んでワクワクしながら暗くなるまで友達と過ごしました。当然カブトムシやクワガタがやってくる木もちあゃんと頭に入っていました。 大人になって初めてイングリッシュガーデンを雑誌で見たとき一瞬にして「やま」が蘇りました。写真にあったブルーベルの小道が露草の小道にかさなりました。バラの茂みがズミの林に見えてきました。 あの頃遊んでいた友達の顔や 名前は思い出せないのに 「やま」の匂い、木々の枝振り 咲いていた花のことはしっかり 覚えているのです。 かぶれるのでぜったい触っては いけない漆の木、秋に赤く色づ くニシキギや私と同じ名前のマユミ 自然に名前や特徴を覚えてゆきました。 暗い林の入り口に毎年咲く野バラ おやつ代わりに食べた 甘い木イチゴの実、 台風一過の朝に落ちていた 栗やドングリ、木登りをした木の 感触まで思い出しました。 あの頃あたりまえに見ていた景色が どんなに素晴らしく美しかったことか 何十年も経ってからようやく気づきました。 学校帰りに抱えるほど摘んだコスモス 忍び込んだ竹林で見つけた 薄紫のスミレの絨毯 ススキの原っぱで見つけた ナンバンギセル、雪の中で咲いていた 白梅の香り・・・ みんなみんな今の私を作ってくれた 木や花たちに違いありません。 心に残っている大切な宝物です。 #
by abe-mayu
| 2008-01-24 22:43
| Spring
これまでに手がけた本を紹介します。
表紙だけでなく本文中にも挿画を数多く描いています。 イラストで学ぶ、初めてのガーデニング 三橋理恵子著/阿部真由美絵 花時間特別編集 角川SSムック 雑誌「花時間」で9年間連載していた〈週末ガーデナーの12ヶ月〉が本になりました。ベランダガーデニングの楽しみが解りやすく紹介してあります。 小さな庭でも幸せガーデニング 三橋理恵子著 PHP研究所 園芸研究家の三橋理恵子さんの書き下ろし 本文中に写真とイラストが入っています。 庭仕事から学んだ人生のレッスン ヴィヴィアン・エリザベス・グリック著/小梨 直訳 白水社 生きる12のヒントが詰まっています。 ベッドサイドにおいて好きなページを開いて読むと心が落ち着きます。 #
by abe-mayu
| 2008-01-07 22:02
| Book
和菓子のほん
中山圭子著/阿部真由美絵 福音館書店 「たくさんのふしぎ」がハードカバーになりました。 子供だけでなく大人も楽しめる絵本です。 事典 和菓子の世界 中山圭子著 岩波書店 1冊で和菓子のことがよくわかる事典です。 本の1/3に和菓子の絵を描きました。 和菓子夢のかたち 中山圭子著/阿部真由美絵 東京書籍 中山さんと作った初めての本です。 この本のおかげで和菓子に魅了されました。 約100点の絵が入っています。 #
by abe-mayu
| 2008-01-06 17:43
| Book
紅茶のある風景
土屋守著/阿部真由美絵 曜曜社出版 「モルトウィスキー大全」の土屋守さんがイギリスで出会った紅茶のお話 約100点の絵を描きました。 週末は、ゆったり英国流生活 西洋ランブリング著/阿部真由美絵 大和出版 紅茶、ガーデニング、アロマ、家具、陶磁器 伝統から学ぶ豊かな暮らしが新鮮です。 約100点の絵を描きました。 英国薔薇の国のマナーブック 長谷川洋子著/阿部真由美絵 東京書籍 ブリティン・センター代表の長谷川先生がお書きになったマナーの本 約70点の絵を描きました。 #
by abe-mayu
| 2008-01-05 17:52
| Book
チョコレート物語
阿部真由美著/絵 講談社 チョコレートが大好きで、始めての絵本を作りました。 チョコレートが出来るまでのお話とレシピ アイスクリーム物語 阿部真由美著/絵 講談社 チョコレート物語の第2弾 アイスクリームの歴史もワールドワイド、奥深いです。 フランスお菓子物語 樋川麻子著/阿部真由美絵 東京書籍 フランス暮らしで出会ったお菓子の話とレシピ 読んで見て作って楽しい本です。 文中に約100点の絵が入っています。 不思議のフランス菓子 大森由紀子著/阿部真由美絵 NTT出版 フランス菓子の美味しさと楽しみ方を教えてくれる本 約20点の絵を描きました。 ボンヌ・ママンが家庭で作るフランスのおいしいお菓子 樋川麻子著/阿部真由美絵 メイツ出版 樋川さんと作った2冊目の本です。 フランス菓子73品のレシピ集 オールカラー 樋川さんのレシピは家庭の美味しさです。 #
by abe-mayu
| 2008-01-05 17:47
| Book
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